注文住宅を検討するうえで、耐震等級には注目しているでしょうか。「言葉は聞いたことがあるけど何を示しているかは知らない」という方も多いのではないでしょうか。本記事では、耐震等級の説明とともに、耐震等級を高くすることによるメリット・デメリットについて解説します。耐震以外の地震対策についても紹介するので、ぜひご一読ください。

耐震等級とは?

耐震等級とは、地震に対する構造躯体の倒壊または崩壊のしにくさを表す指標です。2000年に制定された住宅品質確保促進法という住宅性能表示制度に従って、耐震等級1~3までの3段階で表示されます。なお、住宅性能表示制度は任意であるため、耐震等級が明らかでない住宅も少なくありません。

耐震等級の区分ごとの特徴

耐震等級は、耐震等級1・耐震等級2・耐震等級3の順で性能が高くなります。それぞれの区分がどのような性能を示しているのかを確認しましょう。

耐震等級1とは

耐震等級1は、建築基準法の耐震性能を満たす水準(いわゆる“新耐震基準”)の建物です。新耐震基準は、震度6強~震度7レベルの揺れでも建物が倒壊しない構造基準です。1981年6月1日以降の住宅は新耐震基準に従って建てられているため、これから建てる注文住宅は耐震等級1の性能は最低限保証されていることになります。

耐震等級2とは

耐震等級2は、耐震等級1の1.25倍の地震に耐えられる水準の建物です。災害時の避難所として指定される学校や病院などが該当します。

耐震等級3とは

耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍の地震に耐えられる水準の建物です。防災時に拠点となる消防署や警察署などが該当します。

耐震等級はいくら必要か

耐震等級を考えるのであれば、実際の事例に注目してみましょう。最大震度7の地震が2回観測された2016年4月に発生した熊本地震では、耐震等級1および耐震等級2の住宅でも複数の全壊・倒壊事例が報告されました。1回目の地震には耐えたものの、2回目の地震で倒壊した住宅も多数あったようです。

これに対して、耐震等級3の住宅はほぼ無被害または軽微な被害状況でした。地震に対して万全の備えをするのであれば、耐震等級3が望ましいといえます。

耐震等級の高い注文住宅を建てるメリット・デメリット

耐震等級についての理解が深まったところで、耐震等級の高い注文住宅を建てるメリットとデメリットについて確認しましょう。

耐震等級が高いことによるメリット

メリットとしては2点が挙げられます。1点目のメリットは、地震保険で割引が適用されることです。割引率は耐震等級によって異なり、耐震等級1は10%、耐震等級2は30%、耐震等級3は50%の割引が適用されます。

注文住宅の場合、長期にわたって住み続けることが想定されるため、割引による差額も大きくなりやすいです。たとえば、年間3万円の地震保険に40年加入し続けた場合、耐震等級1だと108万円(3万円×0.9×40年)ですが、耐震等級3だと60万円(3万円×0.5×40年)になり、48万円の差が出ます。

2点目のメリットは、フラット35Sの金利Aプランが利用できることです。35年間の固定金利で住宅ローンを組めるフラット35ですが、耐震等級3を取得すると当初10年間の金利が0.25%引き下げられるフラット35Sの金利Aプランを利用可能です。借入額が3,000万円で借入金利が年1.50%の場合、総返済額が70万円以上安くなることもあります。

耐震等級が高いことによるデメリット

デメリットについても2点挙げられます。1点目のデメリットは、費用が高くなることです。耐震性を向上させるには耐力壁を増やし、耐震金物を使用することになります。設計や構造計算にかかる費用も増えるため、建築コストの増加は避けられません。また、耐震等級を取得するための申請や検査にも費用がかかります。

2点目のデメリットは、間取りの自由度が低くなることです。前述したとおり耐力壁を増やす必要があるほか、柱や梁を太くする、窓を小さくするといった設計上の制限が出てくるため、思い描いていた間取りが実現できないかもしれません。

注文住宅の耐震性に影響を与える耐震等級以外の要素

耐震性の高い住宅の指標として耐震等級を挙げましたが、住宅の地震への強さを高める方法としては、耐震のほかに制震と免震もあります。耐震は、建物を頑丈にすることで地震を受けても倒壊しない強度を持つ構造にする方法をいいます。

これに対して、制震と免震は地震を吸収する装置により建物が受ける揺れ自体を抑える方法です。制震では床や壁などの構造材に粘性の強いゴムや鋼を使用することで揺れを吸収し、免震では建物と地面の間に免震装置を入れて揺れが建物に伝わらないようにします。

耐震では建物が頑丈なだけなので、内部にいる人間や家具は地震の揺れをそのまま受けますが、制震・免震では揺れを抑えるため、内部にいる人間や家具が受ける地震の揺れも抑えられます。ただし、一般的にいずれも耐震より費用が高いため、まずは耐震から考えたほうがよいでしょう。

まとめ

地震の多い日本では住宅の耐震性には注意したいものです。注文住宅を建てるのであればなおさらでしょう。耐震等級3にするには費用がかかりますが、熊本地震クラスの地震でも大きな被害が出ないことが確認されています。

ご自身や家族が安心して住める家には、金銭に代えがたい価値があるのではないでしょうか。金銭的なメリットもあるため、耐震等級を気にしたこともなかったという方は、ぜひ一度ご検討ください。